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朝の4時に鉄拳がしたくなって1人でゲーセン行ったら、鉄拳歴10年の人にボコられた

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時刻は深夜4時。

静まり返った田舎に車のエンジン音が響き渡る。

 

少しばかり眼をギラつかせた男の車は、ずんずんと闇の中を進んでいく。

 

走り始めてから30分ぐらいは経っただろうか…

ようやく町の光が見え始める。

 

車は吸い込まれるように、町で一番強く光を放つ場所へと向かっていた。

 

「ここだ」

 

そう言うと男は、広大な敷地に車が2台ぐらいしか止まっていない、大型過疎ゲーセンの駐車場に車を止めた。

 

白線の間に丁寧に止められた車から降りて来た男は、自動ドアを右腕で素早く反応させ、スピードを落とすことなく光の中へ消えた。

 

そう、朝の4時に鉄拳をするためだけにゲーセンに行った男…

 

だ。

ストリートファイター勢だった俺氏

 

鉄拳やりてぇ

 

そう男が深夜4時に思ったのには理由があった。 

 

…が、その前にまずは男の格ゲー歴を少し。

 

男は根っからの格闘ゲーム好きであり、ストリートファイター勢だった。

スト2からそのキャリアをスタートさせ、日本人初のプロ格闘ゲーマーを生んだ伝説的なゲームであるスパ4の次作のウル4を、上級者の入り口とも言える3000PPを少し超えるぐらいまでやり込んでいた。(ちょっと自慢)

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そんな男の日々の楽しみのひとつは、ストリートファイターシリーズ最新作であるスト5の動画をYouTubeで見ることだった。第一線を退いた男はもうゲームはやっておらず、動画だけ見て楽しむ勢、いわゆる動画勢になっていた。

 

そして、ある夜。

男がいつものように動画を見ていると、関連動画にとある動画が表示された。

 

『鉄拳に豪鬼が参戦!!会場が沸いた!!』

 

えっ…!?

 

ごうきが…?鉄拳に?

鉄拳とは?

知らない人のために説明すると、『鉄拳』とは、ストリートファイターと人気を二分する格闘ゲームであり、男が「なんか地味・・・」という安っぽい理由をこじつけて今まで触ろうとしなかったゲームである。

豪鬼とは?

そして『豪鬼』とは、ストリートファイターシリーズに登場する中二病のエサとも呼べるキャラであり、クソカッコイイ。ウル4ではサブキャラとして使っていたこともあり、思い入れが深い。

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そんな豪鬼が鉄拳に参戦することが決まったという動画…

 

反射的にその動画をクリックした男の目に飛び込んで来たものは、ストリートファイターシリーズの動きを忠実に再現した、ウル4のときとなんら変わらない鉄拳版豪鬼の姿だった。

 

豪鬼が波動拳を撃って、鉄拳のメインキャラである平八とやりあっているその動画を見終わったあと、僕は思った…

 

鉄拳やりてぇ

 

これまで鉄拳をやりたい衝動に駆られることは一度としてなかったのだが、このときばかりは駆られに駆られた。

 

そして、気が付くとハンドルを握り、1人で車を走らせていたというわけだ。

深夜4時に。

 

今、「コイツ痛いな」って思った人は後で職員室に来るように。

安西先生、鉄拳がしたいです

向かったゲーセンには鉄拳が6台あったが、深夜4時ということで誰もいなかった。

 

あたりまえだ。ただでさえ人口の少ないこの田舎で、この時間に鉄拳をしに来るヤバいやつは2人もいない。

 

だけども、人がいるかいないかなんて関係なかった。

今日は明確な目的を持ってここに来たのだから。

 

席に着き、崩したての100円を入れ、念願の豪鬼を選んだ男は、ウル4時代を思い出しながら延々と遊んだ。

 

鉄拳版豪鬼は、ウル4のコマンド・モーション・グラフィック・そして簡易コマンドまでもが見事なまでに再現されていて、すごく愛を感じた。

 

鉄拳はやったことがなかったが、コマンドがほぼ同じなのでコンボもある程度組むことができ、ただただ楽しかった。鉄拳のクリエイターは有能過ぎる。

刺客あらわる

どれほどの時間が経っただろうか・・・

おそらくもう2時間以上は豪鬼だけを使って遊んでいた気がする。両替も2,3回はしたと思う。

 

おかげで、新しいコンボも色々と見つけることができ、CPUには絶対負けない&たまに入って来るオンライン対戦の奴にも7割勝てるぐらいの実力をつけることができた。

 

「あれ…?もしかして俺強い?自分の才能コワッ…」

 

調子に乗ってそんなことを思い始めていたとき、いつの間にか自分の斜め前の席に人が座っていることに気付いた。

 

頭をちょっと下げるとディスプレイと台の隙間から人影が見える。

左手の腕時計に目をやると時刻は7時半。

 

「来たな」

 

ほとんど初めて来るようなゲーセンだったが、気分はもうそのゲーセンに住み着くベテラン勢だった。

 

どんな人が来たのか気になったのでトイレに行くついでにチラ見してみた結果、年齢は30ぐらいの矢野兵藤の兵藤さん似の、帽子を被った優しそうなおっちゃんだということがわかった。

 

プレーまでは見えなかったが、雰囲気は弱そうである。おっと失礼!!

 

「軽く揉んでやっか」

 

漫画でしか見たことがないようなかっけぇセリフを心の中で吐いた俺は、そのおっちゃん側に回り込み、ケータイでコンボを調べているように見えたおっちゃんにこう話しかけた…

 

「あの〜・・・勝負しませんか?」

 

おっちゃんはちょっとビックリしたような顔でこちらを2秒ほど見つめた後に

 

「あぁ、いいですよ〜」

 

と言った。

 

それに対し、俺は

 

「強いですか?僕今日始めたんですよぉ〜」

 

と、「今日始めたわりには強いんですけどねw」を付け足したくなる気持ちをギリギリ抑えて答えた。

 

「ん〜、まあ猛虎ぐらいだよ」

 

猛虎?なんやそれ?とは思ったが、もう勝てる気しかしなかったので

 

「えぇ〜そうなんですね〜!お願いします!」

 

と適当に言って、自分の席に戻った。

 

 

100円を入れ、店内対戦モードを選択する…

そして、慣れた手つきで流れるよう豪鬼にカーソルを合わせた俺は、今日一番の勢いでボタンをッターン!した。

 

「ワクワクが止まらねぇ」

 

心がそう、叫んでいた。

 

 

おっちゃんは顔に似合わずニーナというウェディングドレスを着て闘うよくわからない女キャラを使うみたい。

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まぁどうせ勝つからどうでもいいんですけど・・・

 

俺の店内プレイ初勝利を祝って記念にパシャリ。

 

ああ、イケナイ!

まだ闘っていなかったね…もう勝った気でいたよぉ…

いざ、勝負!!

「ラウンドワン・・・ファイツ!!」

 

ナレーションの声が店内に響き渡る。

 

「いくぜええええええええええ!!!!」

 

 

 

ビシバシビシバシッ!!

 

「うあっぅ!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

「うぅうっ!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

「うっあっ!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

「うっうっ!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

「ああっう!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

 

ビシバシビシバシバーン!!

 

「うぁああああああああああああっ!!!」(HPが0になって倒れる豪鬼の声)

 

「パーフェクツ」(一撃もくらわずに勝った相手を賞賛するナレーションの声)

 

 

 

へっ??????

何が起こった??????

へっ??????

 

何が起こったか良くわかっていない俺の前には、床に倒れ込む大好きな豪鬼と、1ミリも減ってない相手のHPゲージがあった。

 

なんと、弱パンチすら当たらなかった。

 

「ラウンドトゥー・・・ファイツ!!」

 

頭の整理がつく前に、空気の読めないナレーションの声が響き渡る…

 

 

 

ビシバシビシバシッ!!

 

「うぅあっ!」(ダメージをくらう豪鬼の声)

ちょ!!タンマ!!

「ううんぅ!」ダメージをくらう豪鬼の声

あああ待って!!

「うあっあ!」ダメージをくらう豪鬼の声

待ってってばっ!!

「あああっ!」ダメージをくらう豪鬼の声

あぁぁぅ・・・

「あんっう!」ダメージをくらう豪鬼の声

っっ・・・・・

 

ビシバシビシバシバーン!!

 

「うぁああぁぁあああぁあああっ!!!」(HPが0になって倒れるときの豪鬼の声)

「うわあああああああああああん!!!」(心が折れるときの俺の声)

 

「パーフェクツ」(一撃もくらわずに勝った相手を賞賛するナレーションの声)

 

2連続パーフェクト負け。ある意味奇跡。

 

 

 

ラウンドトゥリーのことはよく覚えていないが、多分0.2秒ぐらいで負けた。

100円で2クレジットの良心的なお店なので、リベンジしたとは思うが、もはや記憶すら残っていない。

 

とりあえず、ハチャメチャにボコられた。

 

 

試合が終わったあと、放心状態のままお礼をしに行くと、おっちゃんは笑っていた。

 

終わってからわかったことだが、おっちゃんは鉄拳歴10年で、猛虎というのはなかなか強い人の段位らしい。そしておっちゃんは仕事でこっちに来てる県外の人間で、明日にもこの町を後にするとのこと。

 

そんな話をしているうちにおっちゃんと仲良くなり、そこから鉄拳のテクニックのことや、勝つためにどうしたらいいかをみっちり2時間ぐらい教わったあと、共通の趣味だったスロットの話を1時間ぐらいしてから、俺はおっちゃんに別れを告げた。

 

おっちゃんはめちゃくちゃいいやつだった。舐めてかかった初心者の俺なんかに手加減無しでぶつかってきてくれて、ありがとう。

 

帰りの車内で朝日が目に染みる・・・

 

すごい眠いけど・・・負けて悔しいけど・・・

 

「鉄拳って、超〜おもしれぇじゃん」

 

また新しい発見をした男の眼は、来るとき以上にギラついていた・・・

 

—Fin—